[福岡県春日市] 叱りなし褒めて育てるABA(応用行動分析)による自閉症児の療育施設です

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マママとまままよりお知らせ

2016.11.25

『ABA(応用行動分析)に基づく通園施設での支援と効果』

マママの代表の林が2015年の日本コミュニケーション障害学会(福岡)で発表した内容の一部、事例を中心にまとめたものです。ABA訓練の成果の一端をご紹介します。

1. はじめに

応用行動分析(ABA:Applied Behavior Analysis)はO.I.Lovaas研究(1987)に代表される、自閉症児のために開発された最もエビデンスが豊かな理論かつ訓練体系といえる。この研究では4歳未満の自閉症児19名に週40時間の訓練と親へのトレーニングを実施した結果、9名が普通学級に進学し追跡調査でもその持続が確認されている。
今回、4名の児童にABAに基づいた支援を通園型の施設で2~4時間/週の個別訓練を中心に約2年半実施した。般化目的で教室などでも実施し、2年目からは指導員とのABA勉強会を行い全園児対象に問題行動と行動形成に協力してもらった。3年目には対象のうち2名についてペアレントトレーニングを取り入れ、家庭で訓練の復習に取り組んでもらった。その経過と効果について報告する。

 

2. 方法

【1】 対象
報告者が勤務している通園施設において、発達障害の診断を受けた児童4名(男児2名、女児2名)を対象とした。今回ペアレントトレーニングを取り入れた男児2名(A児、C児)についてはより詳細に報告する。
【2】 場所と期間
主に通園施設内の1室を使用した。
2012年~2014年の約2年半実施した。
【3】 訓練方法
ロバースプログラムの日本版とも呼べる「つみきBOOK 自閉症児のためのABA・早期集中療育マニュアル」(藤坂龍司,2004)に基づいて訓練を行った。A児、C児にはペアレントトレーニングによる家庭での復習を母親に行ってもらった。 C児とD児には、年長に入ってからPECS(Picture Exchange Communication System)を導入している。

 

3. 症例と経過

【1】 A児(男子)
A児は重度(手帳判定)の自閉症であり、開始時4歳1ヶ月であった。指差しや有意語はなく強度のかんしゃく等問題行動があるが、クレーン行動での要求やスマートホンを3階層で操作するなどの行動が見られた。本例に対して平均3.3時間/週、総計431時間の訓練を実施した。なお、家庭での訓練時間は含まれていない。

図1
訓練による獲得課題

図1は「つみきBOOK」に載っている訓練の見取り図である。「椅子に座る」から「ソーシャルトレーニング」までの発達課題が網羅されている。本例でもこれに基づいて訓練を進めた。マッチングと動作模倣から開始し、言語に関しては母音の音声模倣から取り組んだ。4ヶ月目に訓練室で、コップと母親をそれぞれ指差しながら「あっあ」/a aa/と「ママ」/mama/と弁別して呼称し、これが初語となった。
以後名詞400語以上、基本的な形容詞を20語、さらに「とって」「やめて」などの要求語数語、助詞交じりの3語文までが発話可能となっていった。

図2
語彙の獲得例

図2は「かみしばい」という語彙の獲得例である。各音節は音声模倣のプログラムにより獲得済みである。2音連続がキーとなる単位になっている。
これをパーツとし、スモールステップで積み上げていった。実際の訓練における試行記録が図3である。
【ビデオ供覧】(割愛)

図3
語彙の獲得例

訓練では「刺激‐反応‐強化」のパターンで試行を繰り返し、正反応を引き出す。これをABAでは不連続試行(DTT:Discrete Trial Training)と呼ぶ。図3の1行が1試行となっており、獲得例の「かみしばい」という単語を発語できるようになるまでに要した試行数は28、約3分半であった。なお最初の3回はプローブ(探り)としての試行である。
A児については獲得語彙数419語、日本語音節約100個を獲得したあたりから自力命名と文発話が観察されるようになり、家庭でもカレー鍋を覗き込んで「カレー、食べる」など場面に応じた発話が報告された。訓練開始後約1年で「雨降ってる」などの2語文、約2年後には「ママ、チョコちょうだい」などから、時に助詞交じりの3語文レベルで獲得した。
訓練全体としては、卒園までに「つみきBOOK」の中級前半まで進んだ。

【2】 B児(女児)
B児は中度の自閉症であり、開始時3歳7か月であった。指差し(-)、有意味語数語、癇癪(+)。当初より不明瞭ながら“ai”(ちょうだい)など若干の機能的な発話が認められ、訓練を通じて明瞭な発音での「飛行機とって」など2語文レベルで獲得した。本児は他施設での別な療育方法による訓練にも参加しており、ペアレントトレーニングの導入には至らなかった。
【3】 C児(男児)
C児は重度の自閉症であり、開始時4歳4か月であった。食事の他は着席が難しく多動で、自傷、自己刺激などで日常行動が占められている状態であった。通園施設での訓練時間は平均1.7時間/週、総計262時間であった。他のケースに比べて明らかに模倣獲得が困難であったが、訓練によって10個ほどを獲得した。経過とともに着席の持続が可能となり、問題行動も徐々に減少していった。しかし、有意味な発語の獲得には至らず、3年目にPECSを導入した。教室においても、隅に貼ってあるPECSのファイルから絵カードを選んで大人のところまで持って行き、欲しかったおもちゃと交換してもらうことができるようになった。

【ビデオ供覧】(割愛)

図4
動作模倣獲得までの日数

図4はC児の主な動作模倣獲得までの日数である。最初の「万歳」まで30訓練日、他の模倣も26~31訓練日の間に獲得されるという興味深い結果を示した。卒園までに「つみきBOOK」の初級、3分の1ほどまで進んだ。
 ※本例については2015年の行動分析学会(東京)で「自閉症重度例における動作模倣の獲得について」として発表した。
【4】 D児(女児)
D児は重度のPDD-NOSであり、開始時4歳2か月であった。指差し(+)、癇癪(+)、発声(±)、他害行為(+)。訓練により動作模倣などを獲得したが有意味な発語の獲得には至らず、PECSを導入し教室での獲得に至った。大きな問題となっていた他害行動は訓練期間終了までに親への指導により消去された。

 

4. 考察

今回の取り組みの結果はLovaas研究の40時間/週の成果(約半数が通常学級へ入学)には遠く及ばなかったものの、5時間以内/週であっても明らかな効果が認められた。発達障害がABA(応用行動分析)という適切な訓練と、それに基づいた周囲の大人の対応次第で顕著に変化することが改めて示され、特にペアレントトレーニングを通じて親が与える影響の大きさが示唆された。併せて、セラピストをはじめ指導員ら周囲のABAへの理解と取組みが、言語行動を含めて発達に大きな影響を与えると考えられた。


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